韓国の政府機関・文化体育観光部が主催するショーケースイベント『Korea Spotlight 2025』が、10月7日(火)に東京・渋谷の渋谷ストリームホールと10月9日(木)に大阪・難波のなんばHatchで開催される。
『Korea Spotlight』は、韓国の政府機関・文化体育観光部が主催するショーケースイベントで、アメリカ、イギリス、ドイツなどの世界各国で開催。日本でも2022年に初開催を迎えて以来、これまでに2025年の『Primavera Sound』に出演して大きな話題を呼んだエレクトロニック・ヒップホップデュオ・HYPNOSIS THERAPYやNetflix作品『ボーイフレンド』の劇中歌を務めたオルタナティヴエレクトロバンド・Glen Checkなど、インディーロックやエクスペリメンタル、ポップス、アイドルなど、韓国を各音楽シーンを担うアーティストが出演してきた。
Korea Spotlight 2025には、東京公演と大阪公演共通で、Dragon Pony、CHEEZE、KARDI、イ・スンユン(Lee Seung Yoon)、Dabdaといった今後注目のアーティストから実力派までの韓国人アーテイストする。さらにさらにスペシャルゲストとして、東京公演には5作目となる最新アルバム『Who’s in the House?』をリリースしたばかりのギターロックバンド・DYGLが、大阪公演には元BiSHのアユニ・Dによるバンドプロジェクト・PEDROが、それぞれ出演決定している。

そのような豪華なラインナップの中でPointedが特に注目したのは、2024年に韓国音楽賞で3部門を受賞した人気シンガーソングライターのイ・スンユンだ。
韓国ではポップ、ロック、アコースティックの要素を融合させたサウンドと、力強く深みのある歌詞で知られ、「サウンド・メッセンジャー」とも呼ばれる彼は、2013年のデビュー以来、アルバム『Even If Things Fall Apart』(2021年)、『Shelter of Dreams』(2023年)、そして最新作『Yeok Seong』(2024年)を通じて、社会的なメッセージを歌うアーティストとしての存在感を確立している。
今回はKorea Spotlight 2025特集として、イ・スンユンにインタビュー。”世代の声を音楽を通じて代弁するアーティスト”として、韓国の音楽ファンの間で愛される彼のキャリアや音楽へのこだわりから、話題の最新アルバム、そして今回のKorea Spotlight 2025出演の意気込みまでを話をうかがった。

ーー今回、「Korea Spotlight 2025」出演のために来日されます。そこで初めてイ・スンユンさんの音楽に触れる日本のファンも多いと思いますが、ご自身がどのようなアーティストで、どのような音楽を作っているのか、簡単に自己紹介をお願いします。
イ・スンユン:こんにちは、韓国出身のシンガーソングライター、イ・スンユンです。自分の音楽を特定のジャンルで定義することはあまりありません。むしろ、バンドというフォーマットでどんな音の広がりを作り出せるかを探求するミュージシャンだと思っています。
ーー楽曲からはOasisやColdplayといったUKロックからの影響が伺えますが、ご自身の音楽の魅力はどこにあるとお考えですか?
イ・スンユン:ブリットポップから大きな影響を受けてきましたが、同時に韓国の音楽やヒップホップ、ダンスミュージックなどからも影響を受けています。自分の音楽の特徴があるとすれば、さまざまな要素を取り入れ、混ぜ合わせようとしている点かもしれません。自分のサウンドがまったく独創的だとは思いませんが、ひとことで分類するのは難しいですね。それが自分のカラーだと思います。
ーー普段、曲作りをする時はどのようなプロセスで進めていますか?メロディが先か、歌詞が先か、それともインスピレーションによって変わるのでしょうか?作曲活動において大切にしていることを教えてください。
イ・スンユン:そのときどきによって違います。メロディーが先に浮かぶこともあれば、歌詞が先に出てくることもあります。もともと自分は「言葉の人間」だと思っていて、歌詞には特に力を入れてきました。でも、3枚目のアルバム『Yeok Seong』のときは珍しく、まずすべてのメロディーを先に作って、その場で思い浮かんだ言葉を後から乗せていきました。不思議なことに、その歌詞のために最初から曲があったように感じられたんです。曲作りをするときは、どの楽曲にも「決定的な瞬間」があるように心がけています。聴き終わったあとも心に残るフレーズやメロディーがあるような作品を目指しています。
ーー楽曲の歌詞では社会への抵抗や、名もなき人々への賛歌といったテーマが繰り返し描かれますが、そうしたテーマに取り組む原動力は何なのでしょうか?
イ・スンユン:音楽がとりわけ特別なものだとは思っていません。音楽は毎日のひとときの楽しみであり、ただ日々を送る人々にとっての小さな癒しだと思っていて。芸術はそれ自体のために存在するのではなく、世界のために存在しているんだと思うんです。だから当然、音楽もまた世界について語らなければなりません。
その物語が恋愛であれ、喜劇であれ、アクションであれ、エッセイであれ、それは表現のスタイルに過ぎません。自分がどんな物語を語るかで自分を定義するのではなく、自分が知っている世界、体験した世界、そして望む世界について語るのだと思っています。
ーー2024年にリリースされた最新アルバム『Yeok Seong』は、韓国大衆音楽賞で「今年の音楽人」を含む3冠に輝くなど、キャリアの最高傑作と評されています。このアルバムに込めた想いや、日本のファンにぜひ聴いてほしい曲があれば教えてください。
イ・スンユン:私は、大きな出来事であれ、小さな出来事であれ、どんな人生にも流れに逆らう勇気、「Yeok Seong 逆聲(ヨクソン=声を逆らわせる、3rdアルバムのタイトル)」が必要な瞬間があると信じています。そこからこのアルバムの出発点が生まれました。大きな世界、小さな世界、あなたと私の間、そして私たちの心の中での反抗の物語を伝えたいと思ったのです。
アルバム制作を進める中で、「逆聲」にはもうひとつの意味があることを知りました。それは「誰かのために立ち上がる」ということ、正しいか間違っているかを超えて、その人を無条件に支えることです。真の勇気にはそうした思いやりが必要だと気づきました。そこで、勇気を必要とする誰かのための支えの声となるアルバムを作ろうと決めました。
結果的に、このアルバムの物語は、私が語れる限りの大きな物語と小さな物語の両方を内包するものになりました。完成したとき、私は本当に「もしかすると、このアルバムを作るために生まれてきたのかもしれない」と感じました。日本のリスナーには、「Waterfall」と「To the Heart That Wants to Be Caught」をおすすめします。この2曲は、勇気を与え、受け取るという「逆聲」の本質を最もよく表していると思います。
ーー本国では「パフォーマンスの強者」と呼ばれるほどライブパフォーマンスに定評があります。ステージの上では、どのようなことを大切にしていますか?また今回の「Korea Spotlight 2025」では、日本の観客にどのような部分に特に注目してほしいですか?
イ・スンユン:私にとってのキーワードは「没入」と「つながり」です。曲に全身で没入し、自分のエネルギーが自然に観客のエネルギーとつながったとき、初めてその場を共に創り上げることができると感じます。
日本の観客の皆さんに特に注目してほしいパフォーマンスの部分はありません。ただ、自分なりの楽しみ方で、心ゆくまで楽しんでほしいと思います。私はその瞬間瞬間でベストを尽くします。
ーー2023年の東京での単独公演以来の来日となりますが、日本の観客にどのような印象をお持ちですか? また、今回はDYGL、PEDROという日本のバンドとの共演も予定されていますが、楽しみにしていることはありますか?
イ・スンユン:前回の東京公演の前に、「日本の観客は韓国の観客とはライブの楽しみ方が違う」と何度も言われ、心構えをするようにと言われました。ですが実際には、その雰囲気はほとんど同じで、とても楽しい経験でした。
今回は特に、DYGLやPEDROといった日本のバンドと共に演奏できることにワクワクしています。多くを学び、もちろん素晴らしい時間を過ごすのを楽しみにしています。
ーーこれまでに日本の音楽から影響を受けたことはありますか? またお気に入りの日本のアーティストはいますか?
イ・スンユン:最近くるりが好きです。初めて彼らを知ったのは是枝裕和監督の映画『奇跡』で、そのとき「美しい音楽だな」と思ったのですが、最近になって改めてそのアルバムを聴き直し、まさに名盤だど思います。今ではバンドメンバーにも無理やり聴かせています!
ーー最後に日本のファンへ向けて、メッセージをお願いします。
イ・スンユン:お久しぶりです。そして、初めてお会いする方もいらっしゃるかもしれません。私はイ・スンユンです。どうぞよろしくお願いします。
今回のライブが皆さんにとって楽しく、そして意義あるものになることを願っています。私自身も同じように楽しく、意義ある時間にできるよう全力を尽くします。ありがとうございます。
【イ・スンユン プロフィール】
シンガーソングライターのイ・スンユンは、2013年のデビュー以来、アルバム『Even If Things Fall Apart』(2021年)、『Shelter of Dreams』(2023年)、そして最新作『Yeok Seong』(2024年)を通じて、社会的なメッセージを歌うアーティストとしての存在感を確立。2024年には韓国音楽賞で3部門を受賞。ポップ、ロック、アコースティックの要素を融合させたサウンドと、力強く深みのある歌詞で知られ、「サウンド・メッセンジャー」とも呼ばれる。世代の声を音楽を通じて代弁するアーティスト。
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【イベント情報】
『Korea Spotlight 2025』詳細
事前予約リンク: https://w.pia.jp/t/koreaspotlightshowcase2025-j/
東京公演
会場:渋谷ストリームホール
日時:2025年10月7日(火)
事前予約リンク: https://w.pia.jp/t/koreaspotlightshowcase2025-j/
大阪公演
会場:なんばHatch
日時:2025年10月9日(木)
事前予約リンク: https://w.pia.jp/t/koreaspotlightshowcase2025-j/
Text by Jun Fukunaga
