フランスのエマニュエル・マクロン大統領が、”フレンチタッチ”をユネスコ無形文化遺産(UNESCO Intangible Cultural Heritage)に登録するよう求めたことをLe FigaroやMixmagなどが報じている。
フレンチタッチ(フレンチハウスとも)は1990年代半ばから2000年代にかけて世界的に流行したフランス発のハウスミュージックのスタイルで、Daft Punkや彼らが関わっていたレーベル「Roulé」、「Crydamoure」周辺アーティストのDJ Falcon、Alan Braxeのほか、Etienne de Crécy、Bob Sinclair、Cassius、Modjoなどのアーティストによって確立された。
このジャンルは、ディスコ、Pファンク、ジャッキン・ハウスなど、1970年代〜1980年代のアメリカのダンスミュージックに影響を受けつつ、そのような音楽性を主にサンプリングによって取り入れた音楽ジャンル。それらのサンプルをベースにしつつテクノとハウスのリズムをはめ込み、そこにフィルター/フェイズ系エフェクトが加えられていることも特徴と言える。
「音楽の祭日」(Fête de la Musique:フランス発祥で毎年6月21日(夏至の日)に世界各地で開催される音楽祭)を記念してフランスのラジオ局「Radio FG」のインタビューに応じたマクロン大統領は、フランスの電子音楽がベルリンテクノと同様の文化的地位を持つべきだとコメントし、「我々もそれ(UNESCO登録)を実現する」と付け加えた。
また、「私はドイツを愛しているし、いかに親欧州派かはご存知の通りだ。しかし、我々は誰からも教えを受ける必要はない。我々こそがエレクトロの発明者なのだ。我々にはフレンチタッチがある」と述べている。さらにマクロン大統領はAIについても慎重な期待感を示し、「革命」と表現しながらも、「AIは人間の知性に取って代わるものであってはならない。創造性を軽視してはいけない」と警告。さらに、著作権保護の必要性、AIツールの透明性、そしてアーティスト中心のモデルの重要性を強調した。
UNESCOの無形文化遺産リストは、世界各地の音楽、芸術、その他の人間の表現形式を保護することを目的としており、昨年6月にベルリンテクノが同リストに追加された。他にもコロンビアのマリンバ、ジャマイカのレゲエ、キューバのルンバなどが登録されている。
もし、フレンチタッチが国連機関によって認定されれば、このジャンルの創設と発展に貢献したアーティストたちの音楽が”人類の無形遺産”として認められることになる。前例があるだけにクラブミュージックファンとしては実現に期待したい。
なお、2024年のパリ・パラリンピック閉会式では、Alan Braxe、DJ Falcon、Étienne De Crécy、Cassiusら20組以上のフランスを拠点に活動する有名DJ/プロデューサーが出演。DJパフォーマンス「The journey of the wave」を披露している。
source:
https://www.lefigaro.fr/musique/musique-electronique-emmanuel-macron-souhaiterait-inscrire-la-french-touch-a-l-unesco-20250622
https://mixmag.net/read/emmanuel-macron-calls-for-french-touch-daft-punk-electronic-music-unesco-cultural-heritage-status-france-president-news
https://djmag.com/news/french-touch-should-be-added-unesco-intangible-cultural-heritage-list-says-president-macron
Text by Jun Fukunaga