CDJなどDJ機材で知られるAlphaThetaが開発した「KUVO powered by DJ Monitor」が、電子音楽業界から大きな注目を集めている。

このシステムは、クラブでDJが演奏した楽曲の使用料を、自動的にプロデューサーやクリエイターに還元することを可能にする新しいソフトウェアだ。

DJ Magによると現在、イギリスのPRS for MusicやPPL、オランダのBUMA、オーストラリアのAPRA AMCOS/PPCAなどの団体は、ナイトクラブから年間4億ユーロ以上の音楽権利使用料を徴収している。しかし、これまでは楽曲データの手動入力が必要で、多くのセットリストが未提出となり、クリエイターへの適切な還元が行われないケースが多かった。このような状況を鑑みて、KUVOは会場で演奏される楽曲を自動的に識別することで、この課題の解決を目指している。

PRS for Musicのオペレーション改善ディレクターTim Arber氏は、「音楽認識技術は、イギリス全土の音楽会場からのデータ収集を大幅に改善する価値あるツールです。KUVOのような新技術により、会場に負担をかけることなく、ソングライターや作曲家への使用料支払いを、より正確で迅速、そして透明性の高いものにできます」と期待を寄せる。

また、Dave Seaman、Alan Fitzpatrick、Sirus Hoodなど多くの有名DJもこのシステムを支持。特にKUVOが、どのDJがどの楽曲を使用したかを公開しない「セットリストのプライバシー」を維持している点をDJたちは評価しているという。

Boris Brejchaは「私のショーでは自分の楽曲しか演奏しませんが、世界中のクラブで他のDJが私の音楽を演奏していることを知っています。使用料支払いの自動化は大きな前進です」とコメント。さらにDJ Jaguarは「クラブで演奏されたテクノ曲や、フェスで聴いたリミックスなど、アーティストは自分の作品に対して正当な報酬を受けるべきです。音楽で収入を得ることが難しくなっている今、KUVOはゲームチェンジャーになり得ます」と、システムへの期待を語っている。

また、イギリスのNTIA(ナイトタイム産業協会)は今年6月にKUVO Powered by DJ Monitor(AlphaThetaとDJ Monitorの合弁事業)と提携し、クラブやイベント会場での音楽使用の透明性向上と、クリエイターへの適切なロイヤリティ支払いを実現する新たな取り組みを開始することを発表している。

なお、イギリスではPRS For Music、The Ivors Academy、MPA、IPOが音楽制作者向けの「Get Paid Guide」を発表。無料でダウンロード可能となっている。

こうした試みはプロデューサーや業界団体たちから支持される一方で現実面での運営の難しさもある。今年9月、DJ / プロデューサーDVS1が2022年に立ち上げた音楽収益共有プラットフォーム「Aslice」は、エレクトロニックミュージック業界内で支持を集めたが、経済的な苦境を理由に永続的な閉鎖を発表している。

同プラットフォームは、DJがセットリストを報告し、自身の出演料の一部を楽曲を提供したアーティストに還元する仕組みを採用。閉鎖前には、2万7000人以上のプロデューサーに42万ドル以上を分配した実績があった。しかし、運営コストが高く、利益を上げることができなかったため、閉鎖に至ったと報じられている。

KUVO powered by DJ Monitorの詳細はこちら

source:
https://alphatheta.com/en/information/djs-and-clubs-back-kuvo-powered-by-dj-monitor-for-fair-royalties/
https://djmag.com/tech/get-paid-guide-launched-music-makers
https://mixmag.net/read/aslice-ceases-operations-music-revenue-sharing-dvs1-closure-news

Text by Jun Fukunaga

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