近年、UKドリルの隆盛から世界的にも注目を集めるUKラップの進化を探る書籍「What Do You Call It?」が発売される。
著者のDavid Kaneが3年をかけて執筆したこの書籍では、20世紀後半のBritcore、UKヒップホップ、トリップホップの起源から、21世紀初頭のMCが主導するガレージ、グライム、現代のUKドリルまでの発展を紐解く。さらにサウンドシステムカルチャーやパンクシーン、レイヴカルチャーがUKラップの発展に影響も探る内容になっている。
また、同書では、文化理論、歴史研究からJazzie B、Klashnekoff、Skinnyman、Wiley、Tion Wayne、Loyle Carnerなどシーンの重要人物へのインタビューを組み合わせて、イギリスの音楽と文化の流れを変えた重要な要因と人物に焦点を当てる。これらのインタビューの多くは、過去15年間このジャンルについて執筆してきた著者の過去の取材アーカイブから引用されているとのことだ。
DJ magのインタビューでDavid Kaneは、UKラップ音楽の進化と歴史を探る「What Do You Call It?」の執筆背景や意図を説明。2019年のStormzyのグラストンベリーフェスティバルのヘッドライナー出演をきっかけに、イギリスにおけるラップ文化の起源に関する一般的な誤解を正したいと考えたと述べている。そのため、同書では、グライム以前のUKヒップホップやBritcoreなど、世間的にはあまり知られていないアンダーグラウンドなUKラップシーンにも言及しているという。
さらにDavid Kaneは執筆プロセスの困難さを語りつつ、UKラップが世界的に成功を収めた今こそ、この物語を語るべき時だと主張。そのため、同書では単なる音楽の歴史だけでなく、イギリスにおけるアイデンティティと帰属意識の問題も扱う。
また、インタビューの中でDavid Kaneは、サウンドシステムカルチャーやレイヴカルチャーがUKラップに与えた影響について、以下のように述べている。
アメリカではジャズ音楽やJames BrownとSly Stoneのファンクがヒップホップに非常に大きな影響を与えましたが、イギリスでは1970年代と1980年代の若者、特に黒人やワーキングクラスのコミュニティで、レゲエとパンクが非常に人気があり、インスピレーションを与えるジャンルでした。そのため、これら2つのジャンルがイギリスのラップ音楽の形成に大きな影響を与えたのは当然のことです。
『What Do You Call It?』の前半部分では、エレクトロヒップホップの先駆者としてよく引用されるSaxon InternationalとMastermind Roadshowを通じてその類似性を探っていますが、最も重要なのはSoul II Soulのサウンドシステムを通じてです。これは音楽方針が非常に流動的で”人々をつなげるサウンド”を持っており、当時のロンドンの初期ヒップホップシーンと多くのシナジーがありました
DJ Mag
「What Do You Call It?」は、11月22日にイギリスのVelocity Pressから発売される。現時点では英語原書のみの販売となるが気になる内容だ。
source:https://djmag.com/news/evolution-of-uk-rap-explored-new-book-what-do-you-call-it
Text by Jun Fukunaga