世界中のダンスミュージックファンから絶大な信頼を得ている野外フェス「Rainbow Disco Club (以下、RDC)」が、2024年4月19日(金)~4月21日(日)の3日間にわたって、静岡県東伊豆クロスカントリーコースで開催された。

初開催から15周年を迎える記念すべき節目の年となった今年は、6年ぶりの来日となる現代のエレクトロニック・ミュージック・シーンで唯一無二の存在Four Tetをはじめ、ノルウェーのディスコマスターPrins Thomas、UKベースを代表するBen UFO、Pangaea、Pearson Soundの3人によるHessle Audio、世界屈指のディガーであり“Rush Hour”主宰のAntalら、長年にわたりダンスミュージックシーンで存在感を示し続けている大物DJたちが出演した。

また、2022年のRDC“Sound Horizon”での活躍も記憶に新しいHAAi、PeachといったRDCファンに馴染み深い人気の若手DJに加え、ハウス/UKガラージの新進気鋭saluteや現行ジャングルシーンを牽引するTim Reaperが初出演した。

その他にも今年はアジア圏からMr. Ho、Precious Bloom、Gero、ffanが出演。さらに国内からは、毎年恒例のB2Bで会場を沸かせてくれるDJ Nobuを筆頭にDJ Masda、Kenji Takimi、Kuniyuki、machìna、SAMO、Stones Taro、Yamarchy、Chanaz、そしてRDCレジデントのSisi、Kikiorixらが出演した。

Pointedでは、昨年に引き続き、今年もRDCの初日と2日目に潜入。本稿ではその模様をレポートする。

初日の野外ステージ「RDC Stage」の目玉はなんといってもFour Tetだ。昨年は世界有数の大規模音楽フェス・コーチェラでSkrillex、Fred again..とともに大トリを務め、今やダンスミュージックシーンのみならずメインストリームの音楽シーンでもその名を轟かせているベテランのプレイを目当てに、今年のRDCに足を運んだ人も少なくないだろう。

そんなFour Tetは、前半はテックハウスやベースミュージックをプレイして会場を揺らし、後半では自身のニュークラシックと言える「Mango Feedback」や今年リリースした最新アルバム収録曲「Daydream Repeat」などを披露。さらにデトロイトテクノの特大クラシック、DJ Rolandoの「Knights Of The Jaguar」やジャングルクラシックのOrigin Unknown「Valley Of The Shadows」、さらには飛び道具的にThe Cureの「A Forest」までを選曲する圧巻のプレイで初日の「RDC Stage」を見事に締めくくった。

Photo by Masanori Naruse

また、ナイトタイムの会場となる究極のサウンドシステム”Void Acoustics INCUBUS”をインストールした巨大な屋内レイヴ会場「Red Bull Stage」では、国内DJのSAMOとStones Taroが抜群のDJプレイで会場を盛り上げていたが、それ以上に圧倒的な盛り上がりを見せたのはsaluteのDJタイムだった。

Photo by Suguru Saito
Photo by Suguru Saito

現在のUKガラージ人気もあって、国内でも絶大な人気を誇るsaluteは、自身の音楽スタイルでもあるアップリフティングなハウス/UKガラージを次々と投下。自身の人気曲「Joy」やRDC開催当時は未発表曲だった世界的ポップスターRina Sawayamaとの「saving flowers」などでフロアを熱狂させた。終盤にはsaluteが敬愛するフレンチハウスクラシック、Stardustの名曲「Music Sounds Better With You」もプレイ。さらにプレイ時間終了後のアンコールでは、盟友Sammy Virjiのヒット曲「If U Need it」をプレイし、最後の最後まで観客を楽しませた。

Photo by Suguru Saito

続く2日目では、「RDC Stage」でのPeachのプレイが最も記憶に残った。特に終盤のディスコ感のあるファンキーなハウスで会場を盛り上げる様子は圧倒的なDJの腕前を感じさせた。その中でもDJ Rasoul「Kickin Ass」(と思われる曲)は筆者にとってのハイライトだった。また、PeachのDJセットでは、日本でも一世風靡したThe Black Eyed Peasの元シンガー、Fergieの「Fergalicious」の声ネタをマッシュアップした曲もプレイされていた(会場では気づかず、後からSNSでそのことを知った)。

Photo by Masanori Naruse

また、Peachに続いて登場したHessle Audioの3人はハウスやベースミュージックを主体としたUKらしいプレイを展開。筆者が気づいた中では、Daffy & Riko Dan「Wicked & Wild (Ruff Style Remix)」、Sage Introspekt「Singamo Bootleg」といった曲がプレイされていた。DJ巧者3名によるB2Bスタイルのプレイは午後の東伊豆を大いに盛り上げた。

Photo by Masanori Naruse

Hessle Audioと同じ時間帯には「RDC Stage」にTim Reaperが登場。Hessle Audioの裏かぶりとなったため、序盤はまだ会場内にいる観客がまばらだった。しかし、Tim Reaperのストイックかつハードコアなジャングルリストぶりに引き寄せられるように徐々に観客が増加。すぐにTim Reaperがフロアに向けて投下するジャングルビートに合わせて激しく踊りながら音楽を楽しむ観客の姿が見られた。

Photo by Suguru Saito

コロナ禍で苦境に立たされたRDCだが、去年見事完全復活。そして、15周年を迎えた今年は天候にも恵まれたこともあり、昨年以上に盛り上がりを見せたと思う。また、フードやショップのホスピタリティも例年以上に充実。個人的にRDCとSchmatzのコラボクラフトビール「RDC × Schmatz Session Lager」は、ライトめのアルコール度数とクリアな喉ごしでまさに「野外で朝から飲みたいビール」という触れ込みどおりのものだった。

また、「RDC Stage」裏のマッサージブースには今年もお世話になったが、フェスを楽しむ側としては、こうした癒しのスペースがちゃんと会場に設けられていることにとてもありがたみを感じている(去年一度お願いしただけなのにマッサージ師の方が筆者のことを覚えてくれていたことに感激した)。やはり長丁場のフェスでは、心体ともにリラックスする時間をいかに確保するかも重要だ。RDCはその点でも本当に配慮が行き届いている。

節目の年を迎え、大きく飛躍したRDC。次はどんな内容で我々に素晴らしい体験を提供してくれるのだろうか? 来年の開催が楽しみでならない。

Text by Jun Fukunaga

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