シンガー・ソングライター、作曲家、プロデューサー、マルチ奏者であるルシンダ・チュア(Lucinda Chua)。アイデンティティとレプリゼンテーション*について歌い、自らプロデュースを手がけた楽曲「Golden」を、Tash Tung監督との共同制作によるショート・フィルムと共に発表した。

*レプリゼンテーションは直訳すると「表現」や「代表」という意味がある。近年使われている意味は、さまざまなシーンにおいて多様性が適切に表現されているかということを意味する。

若き日の自分の視点から書かれた「Golden」は、お手本となる存在がいない状況下での、自らのアイデンティティについて深く考察する、親密かつ心温まる1曲となっている。「あなたに似ていないとき、私は誰に頼ればいいの?」チュアは静かに、不確かな声で宇宙に向かってそっと囁く。「陽の光にさらされた私は金色に輝くの。」美しいコーラスが加わり、彼らの声が重なり合うと、曲は光り輝くアンセムへと昇華し、若き日のチュアに呼びかける。「初めてであること、初めてであること」歌い、チュアが奏でる高揚感あふれるストリングスのアレンジが全体をより一層引き立てる。

映画監督、コラボレーター、そして親友のTash Tung監督(2019年『Semitones』)と組み、2人はこの楽曲のための切ないショート・フィルムを共同制作した。美しい映画のような物語性のあるショートフィルムは、チュアと、9歳の気鋭子役俳優ココ・ブリジャーが、幼いチュア役の「イアン・イアン」として共演している。制作にあたっては、イギリスを代表する東アジア・東南アジアのクリエイター達がチームを組み、エグゼクティブ・クリエイティブ・プロデューサーのTiger Hagino Reid、プロデューサーのCheruto Wang、セット・デザイナーのErin Tse、ムーブメント・ディレクターのDuane Nasis、写真家のMilo Van Giapが名を連ねている。

「Tash Tungや、東アジア・東南アジアの人材が大半を占めるキャストやクルーと一緒に仕事をしたことは、私のプロとしての人生で初めて、自分がマイノリティでなくなった瞬間でした」。 ルシンダ・チュアはこう続ける。「レプリゼンテーションとは、ダイバシティー(多様性)だけでなく、自分の外側にいる自分を認めることであり、自分の夢や欲望を応援することでもあります。この作品を発表することで、若き日の自分が誇りに思ってくれることを願っています。」

Lucinda Chua :ルシンダ・チュア
南ロンドンを拠点とするアーティスト、ルシンダ・チュアは、音楽とパフォーマンスを通して活動中。ロンドンで生まれ、ミルトン・ケインズで育ったチュアは、イギリス、マレーシア、そして中国にルーツを持つ。3歳からスズキ・メソッドで音楽を学び、後に地元の音楽学校で奨学金を獲得。20代前半、チュアはアメリカのレーベル<kranky>の目に留まり、彼女の最初のバンドであるフェリックスで2枚のアルバムをリリースし、その後北米ツアーを行い、また、スターズ・オブ・ザ・リッドの一員としてヨーロッパ・ツアーを行った。2019年、チュアはソロ・デビューEP『Antidotes 1』をセルフリリースし、同時にFKAツイッグスの『Magdalene』ワールド・ツアーのバンドで演奏。姉妹作の『Antidotes 2』は、<4AD>と契約した後、2021年5月にリリースされた。デビュー・アルバムは2023年にリリースされる。チュアは、イギリス在住の東アジア・南東アジアのアーティストと音楽業界の専門家が主導するコミュニティ、ESEA Musicのメンバーでもある。

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