時代はスナック! 東京の新しい遊び場「スナック」の魅力
90年代から東京のローカルアンダーグラウンドクラブシーンを支え続けたDJでもあり、風営法問題が浮き彫りになった2010年代、いち早く問題提起し、現在の風営法改正の礎を築くきっかけを作った「THE ROOM」にて12年間に渡り、マンスリーレギュラー開催されていた伝説的パーティー「em」をオーガナイズ。そして、2006年には道玄坂に東京のDJ BARムーブメントの先駆けとなったBAR SAZANAMIをオープンさせ、様々なアーティストやDJを輩出、影響を与え続けた(2016年BAR SAZANAMIはハイパースナックサザナミへとリニューアル)SAZANAMI氏。
そんな彼が新時代の遊び方を告げる新スポットとして「ハイパースナックサザナミ」をオープンさせた経緯とは? また今なぜ、遊びの選択肢としてスナックが選ばれるべきなのか? 新しくもどこか懐かしい遊び場”スナック”の魅力についてインタビューを行った。
時代が変わる中で求められた新しいスペース
▶︎ハイパースナックサザナミのオープンの経緯はどういったものだったのでしょうか?
SAZANAMI(以下S):元々、2006年よりDJパーティーを主体としたDJ BARをやっていて、当時はDJ BARのブーム前で大箱で出来ないような企画や面白くて刺激的なDJを中心に箱の運営をしていたのですが、10年も経つと常連のお客さんや運営側の年齢も自然に10歳年齢を重ね、そろそろ大人っぽい、無理して飾らないスペースを渇望されていたし、私自身も求め始めたという部分が強いと思います。
さらに時代が変わってDJパーティーだけではない、新しいスペースが望まれていたということもあったかと思います。そういった経緯から何か違う「スペース」にリニューアルしようという気持ちが沸き起こり、スナックとしてリニューアルしました。
▶︎DJ BARからスナックへの転身というのはなかなかユニークな変化だと思うのですが、なぜスナックだったのでしょうか?
S:元来、クラブやDJ BARってそこで働いてるバーテンダーさんやスタッフさんに会いに行くってことも、その場所に行く理由になりえると思うんですよ、特に小箱なら小箱なほど人間と人間の距離感も近く、音楽以外の目的「人に会いに行く」ってのも重要な要素だと思うんです。よくクラブなんかで見かけるバーカウンターの前に人だかりができてバーテンダーさんやスタッフさん混ざってみんなで楽しく談笑しながら飲むみたいな光景あるじゃないですか?あれって人に会いに行っている雰囲気ですよね。
その「人に会いに行く」っていうの実は他の業態でもあるな、と思ったんです、それがスナックだったんです。スナックってママさんやマスターの人柄、来ている常連さんの魅力でお客さんが付いてる所が多いんですよね。
そこでお店によく来ているお客さんたちにスナックのリニューアル案を提案したら皆さん大賛成で、なかなか他では見られないDJ BARからスナックへのユニークな転身ができたんです。
若い頃パーティー三昧だった人の方が今のスナックというお店の形にハマっています。
▶︎お店をリニューアルしてからのお客さんの反応はどうですか?
S:DJ BAR時代に来ていたお客さんのほとんどが90年代~2000年代、一番クラブやレイブ、フェスが面白かった時代に青春を過ごした人がほとんどでスナックにしたら離れてしまうかな?という危惧はあったのですが、意外に若い頃パーティー三昧だった人の方が今のスナックというお店の形にハマっています。
ハイパースナックサザナミはカラオケがメインではなく、ユーチューブを店内に常備されているタブレットでお客さん自身が選び55インチの大画面で共有することができるので、お客さんみんながDJできるというような状態で毎晩色んな音楽を知ることが出来て盛り上がっています。最新のテクノサウンドからオールドスクールの懐かしいヒップホップ、時にはスタンダードなジャズから昭和歌謡まで、お客さんが自由に選曲できて、大画面大音量で楽しむことができます。お客さんは皆喜んでくれてますし、私自身新しい音楽を知れるのでDJ的な意味でも助かっています(笑)
また、スナックにして新規のお客さんも増えました、今までDJ BARの頃には出会えなかったようなお客さんたちと元々クラブカルチャーどっぷりだった既存客が老若男女混じり合い、まさに雑多でカオティック、ミクスチャーな雰囲気は東京、いや日本で唯一無二かもしれません。
場所柄クラブも多い地域なのでクラブに行く前行った後、カジュアルなスペースとして皆さん使っていますし、新規の今までクラブに行かなかったようなお客さんもうちをきっかけにクラブやフェス、レイヴに行くようになったり、ここで生まれるお客さん同士の「出会い」はなかなかクオリティーが高いかもしれません。
コンセプトは「人」と「出会い」
▶︎ハイパースナックのコンセプトとはどんなものでしょうか?
S:ハイパースナックスナックのコンセプトは「人」と「出会い」です。知らない人同士が狭いお店で出会い、面白い化学反応が起きていけば新スペースとしてこんなに嬉しいことはありません。お客さん同士のコミュニケーションは自由ですし、自然な形で「大人になってからの友達作り」ができる、そんなスペースに進化してきているし、成功もしていると思います。
うちのお店で出会って大きな仕事につながったり、アーティスト同士がコラボレートしたり、タイプの違うような人たちが普通に飲み友達になったりして、新鮮なリアルコミュニケーションコミュニティーとして盛り上がっています。月曜~金曜の日替わりママさんも魅力のひとつだと思います。毎日違う「花」があるのでお客さんも飽きませんし、同性の女性からも人気のあるママさんが多いので男女比は普通のスナックより女性多めです、3割~4割女性客ですね。
タブレット、55インチ最新モニター、Wi-Fi完備等新しい部分と、スナックとして、場としての懐かしい部分が同居している、新しくも懐かしい、そういった多面性もコンセプトであり、多くのお客さんに支持されている要因だと思っています。
同じ空間で同じ雰囲気を共有できたり、密な関係性が築ける
▶︎スナックの魅力は何だと思いますか?
S:スナックはお店の人以外にも相席になったお客さん同士がコミュニケーションしたり、同じ空間で同じ雰囲気を共有できたり、密な関係性が築けるのが良いとこだと思います。それに加え、最近の若い世代はそもそもスナックという業態自体体験したことがないので新鮮なのかもしれません。一見、古いものだけど一周まわって逆に新しい、スナックの魅力はまさにそういうところだと思います。
今東京の遊び場が飽和していて、逆に誰も見向きもしなかった古いスナックという形態が見直されてスナックブームが起きているのはそういう逆転の新鮮さが要因と言えます。
みんな、懐かしくて新しい「新鮮さ」と「人間」の面白さに惹かれてスナックに集まってくるんだと思います。
スナックは個性の塊なので、お店によって人も雰囲気も独特です、そういう違った個性を味わうのも魅力と言えると思います。
お酒も例えば同じシングルモルトウィスキーでも甘いものからスモーキーなもの、作り方や場所が違えば味も風味も変化するようにスナックもお店の数だけ、そこに居る人の数だけ個性があって非常に面白い。今スナックの料金も昔に比べると随分リーズナブルになってきたので、色んなお店を開拓するのも楽しいと思います。
日本の若い世代は新しい「遊び場」を探している
▶︎スナックはブームからムーブメントになりえますか?
S:そうですね、スナックの発祥って第一回東京オリンピックの時代、若者の流行の溜まり場としてスタートしたんですよね。それから数十年、スナックという業態は絶えなかった、そして今また2020年東京オリンピックがあり、日本の若い世代は新しい「遊び場」を探している、そんな中でスナックという業態に注目が集まってブームになっているのはある種自然な流れだったのかもしれません。
業態の流行り廃りはありますが、スナックに関しては絶滅するということはないと思います。ある研究によるとスナックの店舗数ってコンビニより多いんですって、これってスナックをやりたい人も、スナックに行きたい人も大勢いるってことだと思います。
店の数だけ個性があると思いますので色んなお店を巡って自分にピッタリのスナックを見つけるのも面白いのではないでしょうか?
若い世代のスナックも現在増えていて、スナック=古くて、おじさん、おばさんしかいないという固定概念も崩れていると思います。若い世代の新しいコンセプトのスナックも今勢いがあるので、わざわざ探して掘っていくのも楽しいんじゃないでしょうか?
▶︎渋谷近辺でオススメのスナックを教えて下さい
S:うちと似ているのは「女豹」ここは古い友人が立っています、彼もクラブカルチャーに居た人なので、知る人ぞ知るお店ですね。週末は大賑わいしています。内装もカッコいい。
あとは「和」ここもクラブ街ど真ん中にあって円山町界隈で遊んでいる人は必須のお店ですね。長く円山町で遊んでいる人なら一度は訪れたことがある銘店だと思います。
それと「ヤングスナック芹那」このお店は現役のアイドルがママさんというコンセプチュアルなスナックです。カラオケはありませんが手作りの料理やおつまみが美味しくて非常に面白いですよ。
どのお店も遊びやすいお店なのでうちのお店も含めて渋谷スナック巡りなどして遊んでみてはいかがでしょうか?
■女豹
https://www.facebook.com/%E5%A5%B3%E8%B1%B9-196839660489099/
■和
http://snacknavi.com/area/yamanote/shibuya/7561/yawaragi/
■ヤングスナック芹那
http://snacknavi.com/area/yamanote/shibuya/8417/youngsnackserina/
夜遊びの選択肢にスナックを入れるのは今や一周まわってオシャレなのかもしれない
▶︎クラブカルチャーとスナックの相性はいいと思いますか?
S:そうですね、うちのお店に来ているお客さんで言えばみんなクラブミュージック好きですし、今でもクラブ遊びしてて、そのオプションとしてうちのお店に寄ってくれたりしてますね。それに以前某有名DJさんがツイッターでスナックの良さを語ってたり、DOMMUNEなんかでは都築響一さんのスナック特集は何回もやっていますし、MVなんかで言えばスナックが使われているMVいっぱいありますしね。
だいたいクラブがあるような地域には必ずスナックもありますしね、クラブとスナックの相性は良いと言えると思いますよ。夜遊びの選択肢にスナックを入れるのは今や一周まわってオシャレなのかもしれませんね(笑)
銀座2号店のためのクラウドファンディング実施中
▶︎今後のハイパースナックの展開を教えて下さい。
S:今後ハイパースナックサザナミは2号店を銀座にかまえます。6月中旬~下旬頃にオープン予定です。銀座はまた渋谷と違う魅力があって、渋谷という土地とクラブカルチャーとのミックスで繁盛店になったうちが通用するのか本当に不安ではありますが、銀座も最近では随分と若返り、銀座で遊んでいる人たちも新しいスペースを求めているんですよね。そういう好奇心旺盛なお客さんを取り込んで銀座でも新しい波を起こせればと思っています。
銀座自体、新しくもあり懐かしい街ですのできっとハイパースナックのコンセプトも合うと思います。現在、銀座2号店のためのクラウドファンディングをCAMPFIREにて行っています、ぜひそちらもご一読頂き、もし納得して頂ける方がいればご支援頂ければと思います、よろしくお願いします!
▷ハイパースナックサザナミ銀座クラウドファンディング
https://camp-fire.jp/projects/view/68772
▶︎最後に一言
S:スナック特集ということでインタビュー頂きありがとうございました。スナックの魅力は本当に多岐にわたります、お店の数だけ、夜の数だけストーリーがあり、それに付随する魅力は簡単には語り尽くせません。
ぜひスナックに足を運んで頂き、ご自身で体験して頂くのが一番話が早いと思います。団体様は勿論、お一人様も大歓迎です! クラブに遊びに行く前、ライブの前後、夜の街で遊ぶスポットの一つとしてスナックというスペースをブックマークして頂ければ嬉しいです。
■ハイパースナックサザナミ info
ハイパースナックサザナミ 渋谷店
150-0044
東京都渋谷区円山町5-3萩原ビルB1F
ハイパースナックサザナミ 銀座店
104-0061
東京都中央区銀座8-5-19園枝ビルB1F 10号室
*6月中旬~下旬頃オープン予定
http://hypersnack.com/
■DJ SAZANAMI info
毎奇数月最終日曜 青山TunnelにてDJ
http://aoyama-tunnel.com/
Text by Pointed