今、注目すべきラッパーLil Peep、未来のEmoを感じるデビューアルバム『Come Over When You’re Sober, Pt. 1』をリリース

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オルタナティヴロックとヒップホップをつなぐ注目すべき新世代のラッパー、Lil Peep(リル・ピープ)がデビューアルバムとなる『Come Over When You’re Sober, Pt. 1』をリリースした。

LAのアングラなヒップホップコレクティブ「GOTHBOICLIQUE‏」に所属する1996年生まれのこの若きラッパーは、これまでにし、『Crybaby』、『Hellboy』といった、90~00年代のオルタナロック、Emoの音源からサンプリングした現行のメインストリームのヒップホップとは一味違った、まさにオルタナティヴなスタンスの「Emo Trap」と呼ばれる独自のスタイルの曲を発表してきたことで、耳の早い音楽好きの間で注目を集めている存在だ。

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👉7曲全曲Lil Peep節が冴えたEmo Trapに!

そんなLil Peepのデビューアルバムとなる今作も、これまで同様、ラップとともに、完全にこれはEmoじゃないかと言いたくなるようなビートのみTrapといった具合のロッキンチューンを7曲収録。

その収録曲の7曲は、ほとんどの曲が4分に満たないトラックになっており、アルバムとしてはかなりミニマムな収録時間という印象を受けるが、すでに先行曲としてシングルカットされている「benz truck」、それに続く2曲目「Save That Shit」は、ダークなLil Peepらしい、ドラッギーな曲調となっている。

続く3曲目の「Awful Things」ではイントロからして完全にオルタナ、Emo路線でロックスターばりに歌い上げる、まさにEmo Trapな曲であり、その傾向は4曲目で1段と増し、「U Said」は重ためのギターリフ搭載型Trapに。

また、特にこの曲と6曲目のThe Brightsideは、どことなくNirvana(ニルヴァーナ)の「Come As You Are」を想起させる曲と言える。




👉最もライブで聴きたい曲「Better Off(Dying)」

そんなアルバムの中でもとりわけEmo色が強く、Emo特有のメロディックさを感じさせるのが5曲目の「Better Off(Dying)」だ。先述のごとく、これはもう完全にビートがTrapなだけで、ギター音色の使い方などはEmoそのものという仕上がり具合が印象的。サビ部分がグッとくる、いわゆる込み上げて系で、ライブで披露されると絶対に盛り上がる感抜群のアルバムを代表する曲であり、アンコール後にこの曲のイントロがかかると会場ではファンによる歓喜の声が大いに上がりそうな内容だ。

アルバムのラストを飾る7曲目「Problems」は、先述の「Save That Shit」に近い曲調だが、これもまたLil Peep感があるというか、重たく鬱々とした、晩年のカート・コバーンのイメージをモロ使いしたような印象を受けるダークさが癖になる曲と言える。

👉現代版のラップメタル

アルバムについては、Pitchforkが興味深い記事を公開しており、その記事では90年代半ば以降に生まれている彼は、リアルタイムでオルタナロック、ラップメタルなどを聴いているわけではない。それ故にもちろんLimp Bizkit(リンプ・ビズキット)の「Re-Arranged」を母親の胎内で聴いていたわけもないが、Lil Peepの音楽性はそういったもののメロディックな部分を継承した、「現代版のラップメタル」というような捉え方をしているのが興味深い。

Kurt Cobain(カート・コバーン)の頽廃さと、The Smashing Pumpkins(ザ・スマッシング・パンプキンズ)のメタル経由のエモいオルタナ感を感じていたが、確かにそう言われてみれば、オルタナロックとTrapの融合=ラップメタル現代版説は違和感なく受け入れられる気がしなくもない。

90年代後期から00年代前期のMTV要素を消化し、見事アルバムに落とし込んだLil Peep。Pitchforkが指摘するように彼にとってはラップメタル、Emo、オルタナとTrapは区別するものでなく、同一線上に存在するものなのだろう。

逆にその図式が成り立つなら、今後、特にアメリカのマーケットで今以上の評価を得そうな気がする。なぜならこの音楽性は、新旧の「アメリカの若者が好きなもの要素」が一緒にされた、言うなれば1度で2度美味しい”いちご大福”的なものだからだ。

👉次のムーブメントを起こす可能性

初期のSkrillex(スクリレックス)が、Brostepで昨日までKornを聴いていたようなキッズを魅了しまくったように、Lil Peepもまた近い内に全米のキッズを完璧に虜にしそうな予感は少なからず、このアルバムを聴いていたら感じずにはいられず、以前、次のEminem(エミネム)候補と書いたものの、それに加えて次のSkrillex的な存在という未来図もまた彼には用意されているのかもしれないと思わされた。

そう考えたらEDMの次は、「Emo Trap」というルートも無きにしもあらずであり、Lil Peepが次のムーブメントを呼び起こすか、ハイプで終わるか、どちらの存在になるかが気になるところ。

今後もPointedでは、Lil Peepの動向に注目していきたい。

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Text by letter music / Edited by Pointed
Top Image via Lil Peep Facebook




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