ミニマルなトラック構成に太いドラムマシーンの音。近年のLo-Fiなダンスミュージック、ローハウス的なアプローチに柔らかいR&Bスタイルのボーカルが乗っかる。
そんなスタイルで注目を集めているノルウェー出身の女子二人がデンマークで結成したSmerz(スメーツ)が、名門レーベルXLから最近リリースした「Oh my my」が独特のマシーンR&Bという感じを醸し出していて癖になる。
全体的にシンプルな構成でリズムパターンも極限までソリッドになっているこの曲だが、特に不穏なシンセの上モノ、ノイズ、所々で顔を出す暴力的な鈍器ベースといったバックトラックの要素としっとりとしたR&B系のボーカルが絶妙にマッチした、先述のとおり、マシーンR&B感を強烈に感じるアプローチのトラックになっている。
◇2016年デビューの注目の逸材
Smerzは、昨年デビュー作にあたる「Okey」が、海外の人気音楽ブログ「Gorilla vs. Bear」の2016年のベスト・デビュー・リリースのひとつに選出されたり、ロンドンの人気ネットラジオ局・NTS、その他影響力のあるDJらからのサポートを受けている若手デュオで、これまでのリリースの曲も新作同様、シンプルな曲構成になっていて、いずれもそのボーカルが際立たせる内容になっているのが特徴的だ。
ジャンル的にはベッドルーム・シンセポップのダーク版のように感じる彼女たちの作品の中でオススメのトラックとして名前を挙げたいのが、80年代のクラシック・ハウスのような太いベースラインが印象的な「Because」という曲。
その他にもどことなくGrime的なビートアプローチの「Blessed」、TR-808のいかにも機械っぽいリズムなR&Bチューンも彼女たちの音楽性を物語っている。
そして、これは特にオススメというのが、エクスペリメンタルな「You see?」。
この曲はどちらかといえば、他の曲と比べれば、ボーカルパートは少なめになっているインストパート主体の曲なのですが、攻め立てるかのようなチョップ系のシンセ音が非常にアグレッシヴでかっこいいトラックになっている。
◇インダストリアルでもあり、ポップでもある
ちなみにSmerzが影響を受けているのは、Kode 9主宰のベースミュージックの人気レーベルHyper dubからのリリースで知られるJessy Lanza(ジェシー・ランザ)、Jukeの代表的プロデューサーだった故DJ Rashadだそう。
そのことについては、Jessy Lanza、DJ Spinn、DJ Rashadによる「You Never Show Your Love (Teklife Mix)」を聴けば、どことなく通じるものを感じる。
音楽だけでなくMVのDIY感もデュオのアーティーさを示しているようなSmerzだが、ライブパフォーマンスの動画もいくつか公開されており、その中でもロンドンのモダンアート博物館として知られるテート・モダンでのパフォーマンスは入門編としてチェックしておくとよいだろう。
インダストリアルでありながらポップさもひしひしと感じさせるSmerz。今後の活躍に期待がかかる注目の新世代のアーティストだ。
Text by letter music / Edited by Pointed
Top image via Sarah Riisager/Smerz Facebook