米国のMIDI規格管理団体であるMIDI Associationは、ローランド元社長であり、研究開発部門の責任者であった菊本忠男氏の電子音楽の発展への貢献を称え、「MIDI Lifetime Achievement Award(MIDI 生涯功労賞)」を授与。全米NAMMショー(米国時間2025年1月21日~25日、アナハイム・コンベンション・センターにて開催)の会場内で表彰式が行われる。
会場では、ローランドのCloud Business事業本部 Roland Future Design Lab 部長 兼 Consumer Research & Insights 部長であるポール・マッケイブが、菊本氏の代理で同賞を受け取る。
MIDI規格は、ローランドの当時の社長であった梯郁太郎氏らが中心となって1983年に制定された電子楽器の演奏データを機器間で転送・共有するための共通規格で、現代における音楽制作に欠かせないプロトコルとなっている。梯氏は、その功績を称えられ、2012年に「Technical GRAMMY Award(テクニカル・グラミー・アワード)」を、元シーケンシャル・サーキット社 社長のデイブ・スミス氏と連名で受賞している。
菊本氏は、ローランドの研究開発を主導する立場で、電子楽器や演奏情報を管理する機器間の通信方法を統一し、音楽の創造性と電子音楽の制作に革命をもたらした初期のMIDI規格の仕様設計に革新的な提案を行った。
菊本氏は、1977年から2009年の30年以上にわたってローランドに勤務し、代表取締役社長や、技術開発担当専務取締役などを歴任した。ヒップホップやテクノなど、新しい音楽ジャンルの誕生に大きく影響したと評価されているリズム・マシン「TR-808」(1980年発売)や「TR-909」(1983年発売)の開発を主導したことでその名が広く知られている。
また、当時最新のデジタル技術を駆使し、「V-Piano」、「V-Synth」、「V-Guitar」など、画期的な電子楽器の開発に注力した。
菊本氏は、初期のMIDIの仕様設計について、複数の機器の演奏を同期させるために不可欠な「テンポ」、「スタート」、「ストップ」などのメッセージを追加することを提案。これは、現代の音楽制作、さらには今日も進化を続ける電子楽器を使った演奏パフォーマンスの鍵となるものだ。
菊本氏の受賞を受けて、ローランド代表取締役社長 CEOの蓑輪雅弘氏は、次のようにコメントしている。
「技術革新と創造性の追求は、ローランドの研究開発ミッションの核であり続けています。このミッションは、ローランドの創業時から変わらず受け継がれており、菊本氏のような革新者によって推進され、音楽の未来を導き続けています。ローランドのチームは、音楽とテクノロジーの進化を目指し、さらなる未来に向けて重要な役割を担い続けることに誇りを感じています」