ダンスミュージック好きの間で人気を博す電子音楽のオープンエアパーティ・ruralが、2022年7月16日(土)・17日(日)・18日(月・祝)の3日間にわたり「rural presents New Acao」を開催した。
rural presents New Acaoは、これまでになかったユニークなベニュー「ニューアカオ館」を舞台にしたruralのスピンオフイベント。今回会場となったニューアカオ館は1973年の開業以来、熱海で長年親しまれ、昨年11月に宿泊営業を終了した老舗リゾートホテルだ。イベントは国内外の先鋭的な電子音楽のアーティストを集めて行われた。Pointedでは3日間の開催日程のうち、2日目から3日目日程にかけて潜入。今回はその模様をレポートしたい。
まずニューアカオ館の館内は、赤いベルベット絨毯、威風堂々としたシャンデリア、大理石の柱などがある昭和レトロを感じる空間なのだが、rural presents New Acaoではその空間をうまく活用することで、独特の雰囲気がある”異空間”が作り上げていた。
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rural presents New Acaoでは、「ニューアカオ館」のメインダイニングで450席の巨大なすり鉢状のシアターレストランを利用した「Crimson Stage」と熱海の街や海を見渡せる「Abyss Stage」の2フロアが用意されていた。
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また、Crimson StageにはVOID acoustics、Abyss Stageはオリジナル音響チーム「OtOdashi Soundsystem」がサウンドデザインを手がけるなど、音響面でも強いこだわりが見られた。
この日程では、Abyss Stageの昼下がりの時間帯に上海の人気レーベル「SVBKVLT」からのリリースで注目を集めるRillaが出演。エクスペリメンタルなジューク/フットワークなども織り交ぜたダークなDJセットでフロアを盛り上げたほか、夜の時間帯ではChee Shimizuがダブテクノやトライバルテクノなど多彩なテクノを駆使したセットで来場者を盛り上げた。
またCrimson Stageでは、夕暮れ時に日本のアンダーグラウンドレジェンド・Phewがライブセットを披露。昭和クラシックな雰囲気が漂う空間をベテランらしい洗練されたサウンドが印象的だった。
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夜の時間帯は、ベルリンを拠点とする新鋭GiGi FMがドラムンベースやフロアライクなエクスペリメンタルなテクノを中心にしたハードコアなセットを披露。ロングセットならではのハメ系のDJプレイは、薄暗い照明で演出されたCrimson Stageで抜群に機能し、3時間にわたり来場者の身体を揺らし続けた。
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さらに日付が変わったタイミングでGiGi FMに代わり、登場したのは人気アンダーグラウンドレーベル「Timedance」のオーナーで、XL Recordings、Hessle Audioなどからのリリースでも知られるBatu。
エクスペリメンタル・ベースミュージック/ダークテクノ系のサウンドで知られるBatuだが、今回のセットでもそのテイストを存分に発揮。VOID acousticsのサウンドとの抜群の相性の良さを見せたそのサウンドで真夜中の昭和空間を深淵な異空間に変貌させるかのようなプレイでフロアを終始コントロールし続けた。
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rural presents New Acaoでは、ロケーションやラインナップもさることながら、Crimson StageとAbyss Stageを繋ぐ通路にアーティストがウォールアートを描くスペースが設けられていたほか、各ステージにも趣向を凝らしたアートやデコレーションが設置されるなど、昭和レトロと現代のモダンアートが融合した空間作りも目を引いた。また飲食を含むさまざまなショップも出店するなど、ホスピタリティーの面でも充実感があった。
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また今回はニューアカオ館宿泊できるプランも用意されていたが、館内ではそのプランで参加している人も数多く見られた。やはり宿泊先とダンスフロアがドア・ツー・ドアでアクセス可能になっていることは、利便性の面でパーティー好きにとってはかなりポイントが高かったはず。それを見た筆者が今回ニューアカオ館に宿泊しなかったことを激しく後悔したのはここだけの話だ。
最後に振り返ってみるとrural presents New Acaoは”昭和レトロホテルとレイヴを繋ぐ異空間”を生み出すイベントだったと思う。
率直に言って、こういったロケーションで最先端の電子音楽を堪能できるイベントが行われるケースはまだまだ日本では稀だ。しかし、今回のイベントによって、改めてニューアカオ館のような他にはない日本ならではの雰囲気が漂う場所と先鋭的なダンスミュージックの相性の良さが証明されたように思う。それを味わった身としては、来年もこの場所でrural presents New Acaoが開催されることに期待せずにはいられない。
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Text by Jun Fukunaga