ロンドン発の音楽ディスカバリープラットフォーム「ROVR(ローバー)」による日本初の大型イベント「ROVR TOKYO #1 FESTIVAL & RECORD FAIR」が、2026年10月3日(土)に東京の「GARDEN新木場FACTORY」で開催された。
当日は、DāM-FunK、Egyptian Lover、Actress、Nosaj Thingをはじめ、国内外の個性豊かなアーティストが集結。さらに、東京のレコードショップ10店舗が参加するレコードフェアも同時開催された。
これほどのラインナップでありながら入場無料という意外性も手伝い、開催前から音楽ファンの間で大きな注目を集めていた。
ROVRが掲げるのは、アルゴリズムによる自動的なレコメンドではなく、人の知識や経験、感性を通じて新しい音楽と出会うこと。テクノロジーが進化した時代だからこそ、音楽との出会いをもう一度「人」に取り戻そうという、新しい音楽体験の提案だ。
そんなROVRの思想が、東京のリアルな空間でどのように表現されたのか。その一日を振り返る。
開場前から会場には人々が集まり、イベントへの期待の高さをうかがわせた。13時のオープンとともに、まずはCulture Stageがゆるやかに始動。DJ SIGHTが心地よい音楽を届けるなか、来場者は思い思いに会場を散策し、レコードフェアへと足を運んでいく。

なかでも印象的だったのは、熱心にレコードを掘る人々の多さだ。TOKYO RECORD CONVENTIONのキュレーションによって集まった10店舗のレコードショップには、音楽との偶然の出会いを求める人々が次々と訪れた。レコードを一枚ずつ手に取り、ジャケットを眺め、店主と言葉を交わしながら、お気に入りの一枚を探していく。また、ROVRの「アンチ・アルゴリズム」というメッセージをデザインしたオフィシャルグッズを買い求める姿も見られた。まだ日本では馴染みの薄いROVRという存在に対して、その思想やカルチャーに興味を持つ人々が集まっていたことが伝わってくる。
メインステージが始まる頃には、会場もほどよい賑わいを見せ始めた。Culture Stageでは、ROVRのキュレーターでもあるDJ SIGHTからDonna Leakeへとバトンが渡され、音楽の流れに身を任せる人、レコードを探す人、友人との会話を楽しむ人など、それぞれの時間が流れていく。夕方になると、この空間はさらに魅力を増していった。

新しい音楽を探す人も、懐かしいレコードとの再会を喜ぶ人もいる。音楽をきっかけに自然と会話が生まれ、世代やジャンルの異なる音楽ファンが同じ空間を共有する。そこにあったのは、単なる物販エリアでも、ライブの合間に立ち寄る休憩スペースでもない。音楽を愛する人々が集い、交流する、ひとつのコミュニティだった。
一方、Main Stageでは、MAYUMIKILLERがオープニングDJを担当。ステージ転換の時間にも、その場の空気を的確に捉えた選曲で、イベント全体の流れをつないでいく。
続いて登場したDJ KOCO aka SHIMOKITAは、圧倒的なターンテーブルテクニックとパフォーマンスで観客を魅了。レコードを自在に操りながら繰り広げるプレイに、フロアの熱気も一気に高まっていった。

その勢いを引き継いだのは、Jurassic 5のメンバーとしても知られるDJ Nu-Mark。ヒップホップの魅力が詰まった選曲と巧みなスクラッチで会場を盛り上げ、音楽好きの心をしっかりとつかんだ。そして夕方、イベントは新たな局面を迎える。
Nosaj Thingが登場すると、それまでの高揚感に満ちたフロアの空気が一変。繊細で奥行きのあるエレクトロニックサウンドが会場を包み込み、観客をより深い音楽体験へと引き込んでいく。
続くActressは、緻密なライティングを駆使したライブパフォーマンスを披露。実験的なエレクトロニックサウンドと光の演出が一体となり、観客をさらに深い没入感へと引き込んでいった。
ヒップホップ、ファンク、エレクトロ、実験音楽、アンビエント。普段であれば異なるシーンやイベントで体験する音楽が、同じステージで次々と展開される。その大胆な振り幅こそ「ROVR TOKYO」の大きな魅力だった。
実際、SNS上でも、ジャンルを横断するラインナップに対して好意的な反応が見られた。目当てのアーティストを楽しむだけでなく、普段は触れる機会の少ない音楽と出会えることも、このイベントならではの価値となっていた。
この日のハイライトのひとつとなったのが、エレクトロのパイオニア、Egyptian Loverによるライブパフォーマンスだ。マイクを片手に登場した彼が繰り広げたのは、伝説的なドラムマシン「TR-808」とアナログレコードを駆使した、オールドスクールなエレクトロ・サウンド。しかし、その音楽は決して懐古的なものではなかった。40年以上にわたって受け継がれてきたサウンドが、今の時代に聴くからこそ、むしろ新鮮に響く。力強いビート、軽快なマイクパフォーマンス、観客との絶妙な掛け合い。そこには、生粋のエンターテイナーとしての圧倒的な存在感があった。
そして、時計の針が午後8時8分を指した瞬間。「今、何時だ?」「808!」TR-808にちなんだコール&レスポンスが巻き起こり、会場はこの日屈指の熱狂に包まれた。SNS上でも、Egyptian Loverのライブは特に印象的だったパフォーマンスのひとつとして語られ、その迫力やステージングを称賛する声が相次いだ。時代を超えて愛される音楽が、今なお新しい驚きを生み出す。そのことを証明するようなステージだった。

そして、Main Stageの大トリを飾ったのは、ロサンゼルスを代表するモダンファンクの伝道師DāM-FunK。登場するやいなや、ショルダーキーボード「Roland AX-Synth」を肩に掛けてパフォーマンスを披露。スペーシーなシンセサイザーの響きと、身体を自然に揺らすディスコ&ファンクのグルーヴで、会場を一気に自らの世界へと引き込んでいく。そこには難しい理屈など必要ない、音楽を楽しむことの純粋な喜びがあった。それまでの多彩なパフォーマンスを経て、最後は誰もが笑顔になれるような、幸福感に満ちた時間が流れていった。フィナーレには出演者たちが再び姿を見せ、カーテンコールで一日を締めくくった。

一方、その頃のCulture Stageでも、Keb DargeとKiller Tunes Broadcast(WACKO MARIA)が、ご機嫌な選曲でフロアを盛り上げていた。心が弾むような音楽と、自然に身体を揺らす人々。会場のあちこちにポジティブな空気が広がり、最後まで音楽を楽しむ人々の姿が絶えなかった。

Main Stageの圧倒的なパフォーマンスと、Culture Stageの親密な空気感。異なるふたつのステージが共存することで、ROVR TOKYOはフェスともクラブイベントとも少し違う、独自の音楽空間をつくり上げていた。
イベント終了後、SNSには出演アーティストへの称賛に加え、次回開催を期待する声が寄せられた。なかには、入場無料だからこそ、会場での飲食やレコード購入を通じてイベントを応援したいという意見もあった。それは、来場者が単に無料で豪華なライブを楽しんだだけではなく、このイベントが生み出した体験そのものに価値を感じていたことを示す反応でもある。会場を振り返って、何より印象に残ったのは、音楽に対する感度の高い人々が、これほどまでに集まっていたことだ。
長年クラブカルチャーに親しんできた人も、新しい音楽を探している若い世代も、レコードを愛するコレクターもいる。それぞれ異なる音楽的背景を持ちながら、誰もが良質な音楽との出会いを楽しんでいた。そして、多くの人が「ROVRとは一体何なのか?」という好奇心を抱きながら、この新しいプラットフォームが提案する世界を体験していたように感じられた。
音楽を聴く。レコードを掘る。誰かと話す。知らなかった音楽に出会う。それらは一見すると、音楽好きにとってごく当たり前の行為かもしれない。しかし、アルゴリズムによって次に聴く音楽まで提案される時代だからこそ、人の感性や偶然の出会いがもたらす喜びは、より大きな意味を持つ。「ROVR TOKYO」が示したのは、単に新しい音楽プラットフォームの可能性だけではない。音楽を通じて人と人がつながることの楽しさ、そして未知の音楽と出会うことの豊かさだった。最初から最後まで、会場のあらゆる場所に音楽への愛情があふれていた一日。ROVRが東京で踏み出した第一歩は、音楽の未来を考えると同時に、私たちが音楽を好きになった原点を思い出させてくれるものだった。
ROVR TOKYO #1 FESTIVAL & RECORD FAIR
日時:
2026年10月3日(土)13:00〜22:00
会場:
GARDEN新木場FACTORY
東京都江東区新木場2-8-2
入場料金:
無料(要事前登録)
LIVE & DJ:
DāM-FunK [LIVE]
Egyptian Lover [LIVE]
Actress [LIVE]
Nosaj Thing [LIVE]
Donna Leake
DJ Nu-Mark
DJ KOCO aka SHIMOKITA
Keb Darge
Killer Tunes Broadcast (WACKO MARIA)
MAYUMIKILLER
DJ SIGHT
RECORD FAIR:
HMV record shop @hmvrecordshop_shibuya
YELLOW POP Kawaguchi @yellowpopkwgc
Breakwell Records @breakwell_records
FOURTH WAVE RECORD FACTORY @fourthwaverecordfactory
Mulahi De Akkitum @yannyan929
junkan records @junkanrecords
東京コレクターズ @tokyocollectorsrecord
Positive Pay For Records @positivepayforrecords
PAYME Archives. @thepayme
Manhattan Records @manhattan_records
CURATED by TOKYO RECORD CONVENTION @tokyo_record_convention
イベントページ:
https://www.rovr.live/TOKYO
