北アイルランド・ベルファスト出身のエレクトロニック・ミュージック・デュオ、バイセップ (BICEP) が、待望のニュー・アルバム『SLUG』を2027年1月29日に「Ninja Tune」よりリリースすることを発表した。全18曲を収録した本作は、バイセップの音楽的DNAを余すところなく映し出す作品であり、彼らならではのサウンドを軸に据えながらも、その音楽的パレットをさらに広げ、これまでのスタイルを新たな領域へと押し進めている。
本作は3曲ずつをまとめて発表するという異例のリリース形式が採用されており、全3回にわたるシングル・リリースには、それぞれ独自の3部構成のショートフィルムが付随する。映像では、フリー・パーティー、伝書鳩の愛好家、デモリション・ダービーという、それぞれ異なる世界が描かれている。
『SLUG』の根底にあるのは、第一印象の向こう側に目を向けようというメッセージだ。アルバム・タイトルは、多くの人が「ナメクジ」という言葉から真っ先に思い浮かべる陸上の生き物と、驚くほど鮮やかな色彩や形状、複雑な造形を持つ海中の仲間たちとの鮮烈な対比から着想を得ている。このアイデアについて、バイセップは次のように語る。
『SLUG』というアルバム・タイトルは、陸上に生息する地味な見た目のナメクジと、同じ仲間でありながら、色鮮やかで驚くほど多様な姿を持つウミウシ(英語では「sea slug = 海のナメクジ」)との対比から着想を得たものだ。一見するとありふれたものでも、視点を変えれば、そこには想像もしなかった豊かな世界が広がっている。そんな、見た目や第一印象だけではわからない物事の奥深さが、アルバム全体を貫くテーマとなっている。このアイデアについて、バイセップは次のように語る。
「これは素晴らしいメタファーだと思ったんだ。あるものを見て、こういうものだと思い込んでいても、実際には最初に認識したものの向こう側に、まったく別の世界が広がっている」
こうした対比の感覚は、アルバムの根幹にも息づいている。整然としたドラム・パターンには歪みが加えられ、透明感のあるヴォーカルにはアナログ処理が施され、柔らかなシンセサイザーの音色には粗削りな質感が重ねられている。哀愁、高揚感、そして感情に深く訴えかける表現といった、バイセップが長年培ってきた特徴をさらに押し広げながら、相反するサウンドや感情をあえて共存させることで、これまで以上に豊かな音楽世界を生み出している。
今回の「Gas / Ultra / Equarium」にも、3部構成のショートフィルムによる独自の映像世界が用意されている。監督を務めたのは、アレックス・タカーチュ(Alex Takács)。これまでにNike、ロード、フライング・ロータス、ボノボ、ザ・エックス・エックスなどの映像作品を手がけてきたクリエイターだ。
3曲を通して展開される物語では、鳩の愛好家たちによる強盗計画を描きながら、監視と拘束に対するつながりや自由というテーマを掘り下げている。
『SLUG』では、二面性というコンセプトが制作の早い段階から音楽そのものに影響を与え、作曲からプロダクションに至るまで、作品全体を貫く創作原理となった。その制作過程について、バイセップは次のように語っている。
「今回のアルバムでは、自分たちの音楽を大きく広げたいと思っていた。僕たちにとっては、新たなスタートのような感覚だったんだ。これまでの作品よりもずっと多彩なアルバムを作りたかったし、みんながバイセップの音楽に期待するものを超えていきたかった。驚きとコントラストに満ちたアルバムを作りたかったんだ。僕たちは昔から音楽の中で哀愁を表現してきたし、喜びと悲しみを組み合わせようとしてきた。でも今回のアルバムでは、その世界をこれまで以上にはっきりと形にすることができたと思う。相反する感情を一緒に存在させることで、それぞれの感情がより大きく、豊かなものになるんだ」
ツアー活動を休止したバイセップは、日常的なリリースサイクルやオンラインから距離を置き、自らのスタジオと過去の音源アーカイブに没頭した。10〜15年前のデモや未完成のアイデアを掘り起こし、当時は実現できなかった可能性を改めて検証。自分たちのサウンドの本質を見つめ直し、その核を保ちながら、表現の可能性をさらに押し広げていった。新たなスタジオへの移転を機に、制作環境も刷新。ゲスト・アーティストとのコラボレーションを積極的に取り入れ、彼らから届いた素材を自ら再構築することで、当初の構想を超える楽曲へと発展させていった。
その結果、『SLUG』には過去最多となる豪華なゲスト陣が参加。クラーク、アースイーター、ローレン・ダファス、ジョージ・ライリー、ソアー、サスキア、ケヒナ、クーカ、サッシー009、ロウィーナ・フィスクス、ジュリア・ケント、ゾシア・ヤゴジンスカらが名を連ねている。
こうしたテーマの多くは、『SLUG』のビジュアル面にも反映されている。アートワークは、A24、ロザリア、ストームジーなどの作品を手がけてきたクリエイティブ・ディレクター、ヴィクトル・Hとのコラボレーションによって制作された。
鮮烈なコントラスト、レイヤー構造、歪み、そして大胆な色彩を組み合わせることで、アルバムのコンセプトを視覚的な言語へと昇華。写真やデザインには、アナログ・フィルム、印刷、再スキャンといった物理的なプロセスを積極的に取り入れ、不完全さや予測不可能性をあえて作品に持ち込んでいる。
バイセップは次のように語る。
「デジタルの世界では、あらゆるものがきれいで鮮明になりすぎてしまうし、AIを使えば同じものを何度でも再現できる。でも、ポラロイド写真やオリジナルのプリントには、物理的なプロセスそのものが生み出す生命感があるんだ。すべてが完璧にきれいで整ったデジタルの世界では、少し失われてしまうような奥行きがある。今は、どうすべきかを周囲から押し付けられることがあまりにも多い。自分の頭で考えるためには、意識的に闘わなければならない時代なんだ」
全18曲からなる『SLUG』は、レイヴ、ブレイクビーツ、ヴォーカルを主体とした楽曲からアンビエントのサウンドスケープまで、多彩な音楽世界を行き来する作品となっている。バイセップによれば、いつ、どこで、どのように聴くかによって、異なる表情を見せるアルバムを目指したという。
「ここまで長い道のりだった。多くの楽曲は、何年もかけて集めてきた断片を組み合わせたもので、もちろん新しい素材もたくさん使っている。何度も繰り返し聴いて、そのたびに新しい発見があるようなアルバムにしたかった。予想外の展開があったり、少し考えさせられる瞬間があったり、さらに深く掘り下げて、自分だけの道を見つけられるような作品を目指したんだ」
そして今年11月には、3年間の休止期間を経て、彼らの代名詞ともいえる「BICEP LIVE」が復活。ロンドンの名門ロイヤル・アルバート・ホールで開催される特別公演は、すでにソールドアウトとなっている。
バイセップ最新アルバム『SLUG』は、2027年1月29日にCD、LP、デジタル配信で世界同時リリース。国内盤CD (2枚組) にはステッカー、歌詞対訳、解説書が封入される。LPは、通常盤 (ブラック・ヴァイナル)に加え、限定盤 (セーフティ・イエロー・ヴァイナル)、そしてBeatink.com限定盤 (ピクチャー・ヴァイナル) の3形態が発売される。
リリース情報:
label:BEAT RECORDS / NINJA TUNE
artist:BICEP
title:SLUG
release date:2027.1.29
https://linktr.ee/bicep_slug
2CD Tracklist:
Disc 1
01. Gas (feat. Lauren Duffus & SOARR)
02. Air (feat. SOARR)
03. 777 (feat. Eartheater)
04. Lemonder
05. Ultra (feat. Eartheater & Saskia)
06. Cielo
07. BICEP & Clark – Edmeno
08. Pole II (feat. Kehina)
09. Equarium (feat. Kehina)
Disc 2
01. Viper (feat. Saskia)
02. Curb (feat. George Riley & KUČKA)
03. Horses
04. Janus (feat. Sassy 009)
05. Lamb (feat. Rowena Fysx)
06. Honda
07. Xy
08. Rose (feat. Kehina)
09. Tides (feat. SOARR)
