世界を席巻中のスウェーデン発ポップ・アイコン、ザラ・ラーソン(Zara Larsson)。2026年10月7日(水)・8日(木)、恵比寿 ザ・ガーデンホールにて自身初となる単独来日公演が大盛況のうちに終了したが、そのうちうの8日(木)公演のオフィシャル・ライブレポートが公開された。




ライブが始まる前から、会場の周りは並々ならぬ熱気に包まれていた。髪や服にあしらったハイビスカスの花飾り、ラインストーンを散りばめたグリッターなメイク、そしてスパンコールのトップスやデニムのミニスカートなど、思い思いのファッションに身を包んだ女性ファンたちが、開演を待ちながら自撮りを楽しんでいる。トロピカルな色彩とY2Kの美学が衝突したその装いは、ザラ・ラーソンが最新アルバム『Midnight Sun』で打ち出したキッチュでカラフルな世界観そのものだ。10月7日、8日の2日間にわたり、恵比寿ザ・ガーデンホールにて開催されたMidnight Sun Tourの日本公演。サマーソニックの出演以来9年ぶり、そして単独では初となる来日ライブは、両日ともソールドアウト。筆者が足を運んだ2日目も、この特別な瞬間を目いっぱい楽しもうというポジティブな空気に満ち溢れていた。
ライブが始まると、ファンの熱気はさらに高まる。オープニング曲「Midnight Sun」から、いきなり割れんばかりの大合唱と大歓声。ザラの迫力ある歌声さえもかき消されそうになるほどの、凄まじい声量だ。続く「Blue Moon」「Can’t Tame Her」でも観客の熱狂は微塵も衰えない。初日の公演後、ザラはSNSで、「日本の観客は静かだと聞いていたのに、すごくラウドだった!」と喜びを爆発させていたが、実際その場に身を置くと、彼女の興奮気味の投稿にも強く納得させられた。
ブルーのスパンコールが輝くブラトップに、フリルをあしらったミニスカート、そして目元にはハローキティを思わせる赤いリボンと猫ヒゲのメイクを施したザラは、2人の女性ダンサーと共に、次々と楽曲を披露していく。途中、ピンクのファーをあしらったトップスとローライズのデニムパンツに着替えたと思ったら、続いては腕元のスウェーデン国旗が目を引くトップスと人魚の鱗のように輝くミニスカートへと衣装チェンジ。多彩なY2Kファッションを次々に見せていく。オレンジやピンクやブルーに色彩を変える、ステージ後方にある半円形のセットも、アルバムで描かれる「沈まぬ太陽」「終わらない夏」という世界観を演出していた。
わずか10歳でスウェーデンのオーディション番組で優勝し、2010年代半ばには「Lush Life」「Never Forget You」など世界的ヒットを放ったザラ。キャリアの浮き沈みを経て再び大きな注目を集めている現在の彼女だが、ステージで目を引いたのは、長年の活動によって磨き上げられたパフォーマンスの確かさと、自信に満ちた堂々たる振る舞いだった。アップテンポの楽曲では観客の大合唱が彼女の歌声と一体になる一方、「Ruin My Life」や「Saturn’s Return」のようなじっくりと聴かせる曲では、フェイクも織り交ぜながら、パワフルでありつつ繊細なニュアンスも湛えた歌声を披露。ダンスも華やかで力強く、総合的なエンターテイナーとしての実力を存分に見せつけた。
なかでも、強烈な印象を残したのは「Pretty Ugly」だ。女性に求められる「おしとやかさ」や「お行儀のよさ」を拒み、怒りや衝動、醜い部分も含めたありのままの自分を肯定する、痛快なエンパワーメントソング。観客は冒頭から歌うというより絶叫するような勢いでシングアロングし、「ワタシハ、カワイイ!」という日本語のフレーズを交えたコール&レスポンスも巻き起こった。この日、幾度となく繰り返された大合唱のなかでも、ひときわ大きな盛り上がりを見せた瞬間だっただろう。女性に押しつけられる「理想の女性像」を痛快に突き返す曲を、自分自身を思いきり楽しむファッションに身を包んだ女性たちが声を張り上げて歌う。その様子には、Y2Kの楽しさやセクシーさを、女性の主体性をより強く打ち出すことで現代的にアップデートした、ザラの魅力が凝縮されているように思えた。
女性の主体性を称える開放的な空気は、ステージ全体から感じられた。バックバンドは全員女性のメンバーで、ザラの衣装チェンジ中にはギタリストやキーボードプレイヤーがステージ中央に出てきてソロを披露。それぞれに見せ場が用意され、メンバー同士がドリンクで乾杯する微笑ましい一幕もあった。また、ダンサーたちも単なる脇役ではなく、表情やジェスチャーで観客に積極的に語りかけ、ショーを盛り上げる。主役のザラだけでなく、ステージに立つ全員が生き生きと輝いている。決して目立つ場面ではないかもしれないが、そんなひとつひとつの様子が、このライブの幸福感を支えていたように思う。
もちろん「Lush Life」では、恒例のファン参加企画がおこなわれた。フロアから必死にアピールする熱心なファンが大勢いる中、今回ステージ上に招かれたのは男性ファン。ピンクのスパンコールのベルトを身に着け、ザラの大ファンであることがファッションや言葉の端々から伝わってきた彼は、完璧な振り付けのダンスを披露し、会場を大いに沸かせた。そして「The Ambition」の途中には、「次は東京ドームでやりたい」と宣言する場面も。成功を手にしても満足できず、さらなる高みを求め続けてしまう心理を赤裸々に歌った曲だけに、その言葉はなおさら印象的だった。現在の彼女は既にヨーロッパでアリーナ公演が実現している。アメリカでも次はその規模になる可能性が高い。そんな彼女が日本での大きな野望を堂々と口にする姿には、最近の急激な再ブレイクに裏打ちされた確かな自信が感じられた。次がいきなり東京ドームかはさておき、日本でもキャパ1500人の会場で観られるのはおそらく今回が最後だと考えるのが妥当。その意味でも、この来日公演は極めて貴重なものなのだ。
クライマックスは、最後に再び披露された「Midnight Sun」。今度はビートを抑えた静かなアレンジで始まり、ミュニ・ロングをフィーチャーしたリミックス・バージョンのヴァースも織り交ぜられる。最初のコーラスでは、フロア前方の男性ファンが周囲の観客に持ち上げられ、海外公演でお馴染みのイルカポーズを再現する一幕も。ザラも客席に目を向け、指さすような仕草を見せていた。今回はステージ上で披露されなかった象徴的な演出を、ファンたちが自ら再現してしまう。まさに観客も一緒になってショーを作り上げていたことを物語る美しい光景だった。
最後のコーラスを前に、ザラは観客にこう語りかけた。「みんな本当に最高だった。また戻ってくるのが待ちきれない。最後のサビでは両手を上げて、一緒に歌ってほしい。そして自由な気持ちになって、このライブが終わるときには少しでも幸せになっていてほしい。その喜びを世界に広めて、お互いに優しく接してほしい」
その言葉に応えるように、フロアからは再び大歓声が巻き起こる。ザラもまた、弾けるような笑顔で最後のコーラスを歌いきった。自分らしくあることを肯定し、その喜びを周囲の人々と分かち合い、さらには他者への優しさへと繋げていく――そのポジティブなメッセージは、最後のMCだけではなく、このライブ全体からも伝わってきた。圧倒的な熱気に包まれ、瞬く間に駆け抜けた90分間。終わらない夏のような喜びと高揚感が、この夜、確かに感じられた。
(文:小林祥晴)
●Zara Larsson 2026年10月8日(木)公演セットリスト
- Midnight Sun
- Blue Moon
- Can’t Tame Her
- SHE DID IT AGAIN
- I Would Like
- Sundown
- Love Me Land
- All the Time
- Pretty Ugly
- Wow
- Ain’t My Fault
- Hot & Sexy
- The Ambition
- Girl’s Girl
- Stateside
- Eurosummer
- Never Forget You
- Ruin My Life
- Saturn’s Return
- Puss Puss
- Lush Life
- Symphony
- Midnight Sun
日本公演の公式セットリスト・プレイリストも各種ストリーミングサービスにて公開中!
https://ZaraLarssonJP.lnk.to/MidnightSunTourSetlistSJ
さらに、ソニーミュージック洋楽の公式X及びInstagramではザラの来日を記念した #ザラ来日Look SNSキャンペーンも開催中!抽選で5名様に日本オリジナルキーチェーンが当たるチャンス。
https://www.sonymusic.co.jp/artist/ZARA/info/587395
(応募〆切:10/12(月)23:59)
