2026年8月17日、ユニバーサル ミュージック本社にて、新たな音楽ショーケースイベント「東京音始(TOKYO OTOHAJIME)」の記念すべき第1回が、音楽業界関係者向けに開催された。
「東京音始」は、今こそ日本で花開かせたいアーティストやサウンドを紹介するショーケースイベント。時代を切り拓く鮮烈な才能を持つ新人アーティストから、改めてその真価を世界へ響かせるベテランアーティストまで、国内外の多彩な才能を日本に紹介していく。
第1回には、イギリスとスーダンにルーツを持つ新進気鋭のシンガーソングライター/ボーカリスト、エルミーンが出演。Fujii Kazeとのコラボレーション・シングル「Comets + Gold」も、国内で大きな注目を集めている。
さらに、SUMMER SONIC 2026で初来日を果たした、ロンドン発のインディーポップ・デュオ、Good Neighboursも登場。これまでに発表した楽曲の累計ストリーミング再生数は10億回を突破しており、世界的に注目を集める存在として期待が寄せられている。
当日は、両アーティストによるライブパフォーマンスに加え、Q&Aセッションも実施。それぞれの個性と音楽性を存分に感じられるステージが披露され、会場に集まった関係者を魅了した。
今回は関係者向けのイベントとして開催されたが、「東京音始」は将来的に一般の観客を迎えた形での開催も予定している。国内外の新たな才能や優れた音楽との出会いを生み出す場として、今後の展開にも注目が集まる。










その記念すべき第1回の模様を伝えるライブレポートが到着した。
活動を開始し始めたばかりの新鋭から、長いキャリアを重ね実力を磨いてきたベテランまで、東京(日本)ならではの観点で、現代にフィットするミュージシャンをあらゆる垣根を超えて紹介するというコンセプトのもと、レディー・ガガやテイラー・スウィフトなどを擁するユニバーサル インターナショナルがスタートさせたプロジェクト「東京音始」。その幕開けを告げるショーケース・ライヴが開催された。メディア関係者を中心に、日頃からさまざまな音楽に触れている人々が開場した瞬間から多く詰めかけ、このプロジェクトに対する期待の高さがうかがえる状況のなか、今回は2組の気鋭ミュージシャンがステージに登場。耳の肥えたゲストたちを唸らせた。
まず最初にステージを盛り上げたのが、ロンドン発のインディー・ポップ・デュオであるGood Neighbours(グッド・ネイバーズ)だ。サマーソニック2026の出演後となるパフォーマンス。サマソニでは、夏の爽快な空気を感じさせるキラキラしたバンド・サウンドを展開し、開場まもない出演時間であったにも関わらず、多くのオーディエンスを魅了させ、SNSでも絶賛する声が高かった彼ら。ここではその輝きから一転、メンバーのOli FoxとScott Verrillが友人のリヴィング・ルームに招かれたようなリラックスした表情を浮かべながら、しっとりとしたギターの弾き語りパフォーマンスを披露。6月に配信された最新シングル「Superstar」では、夏の開放感をスクイーズしたような甘酸っぱいサウンドであったが、ここではドリーミーでアンニュイな夏の夜の空気が漂うサウンドに。自分だけの<スーパースター(推し)>に存在に対する深い思い、またそれが届かないもどかしさみたいなもの(ここが楽曲の本質な部分かもしれない)が、OliのエモーショナルなヴォーカルとScottのソリッドなアコースティック・ギターの音色から伝わってきた。また、全米・全英チャートに長期間ランクインし、世界累計8億回以上のストリーミングを記録するなど、彼らの名前を一躍世界に広めたデビュー曲「Home」では、ドラマティックな展開のオリジナルとは異なるブルージー(オーセンティック)なアコースティック・サウンドで再構築。人間が本来いるべき場所(ホーム)とはどこなのかを鋭く問いかけるようなパッション、そしてメロディ・メーカーとしての彼らのタレント性をダイレクトに感じることができた。ライアン・テダー(ワンリパブリック)に通じる部分があるのかもしれない。ソングライター/プロデューサーとしての今後も期待させるパフォーマンスだったと思う。全部で4曲を披露したのち、Q&Aに応じてくれた彼ら。普段とは異なるパフォーマンスに「自分たちの核となる部分が表現できた」(Scott)と満足そうな表情。また、今後に関しても「単独公演など、もっとリスナーのみなさんと繋がる機会を作りたい。邦楽ミュージシャンともコラボしてみたい」(Oli)と、日本での活動の充実を期待させるコメントを残して、ステージを後にした。
フィール・グッドでメロウな雰囲気に会場が包まれたなか、次に登場したのが英オクスフォード出身スーダンをルーツに持つシンガー・ソングライター、Elmiene(エルミーン)である。彼もまたサマソニに登場。東京会場では、今年6月に発表したシングル「Comets + Gold」でコラボレーションしたFujii Kazeがサプライズ出演。30秒のみのリハーサルとは思えない息のあったセッションに幅広いオーディエンスが絶賛する声がSNSに投稿され、さらに知名度を上げた直後のパフォーマンスとなった。サマソニと同じ、自身のルーツを感じさせる民族衣装に身を包んで、キーボードの前に座り「こんにちは、みなさん」と流暢な日本語で挨拶。おもむろに鍵盤を弾き始めると、流麗なグルーヴが会場を包む。バックの都心のビルの灯りも相まってロマンティックな雰囲気に一変。そのムードにあわせるように、先日リリースされたデビュー・アルバム『sounds for someone』の収録曲や、ホイットニー・ヒューストンのヒット曲「Exhale (Shoop Shoop)」などのカバーなどをノンストップで披露。音符の上を自由に泳ぐような演奏スタイルと、ソウルフルなヴォーカルは、以前サポート・アクトとして共演したことがあるというスティーヴィー・ワンダーを彷彿とさせる表現力の高さ。すでにロンドンでは5,000人クラスの会場を埋め尽くすほどの人気を誇る、その実力も伝わってくるものだった。また、ラストでは「みなさん、一緒に歌ってくださいね。(日本語で)わかりましたか?」と伝え、アルバム未収録曲「Anyways」のフレーズをレクチャーし、会場に一体感を築く。ソウルやR&Bをルーツにしながらも、ジャズの即興性やロックの高揚感、ヒップホップのグルーヴなど、あらゆる要素を感じる音楽スタイルを、15分程度の時間で凝縮。でも、彼はそれだけではなく大のアニメ好きだそうで、サマソニのステージでは日本を代表する海賊漫画『ONE PIECE』のテーマ曲をカバーしていたが、終演後のQ&Aでは「日本のアニソンを作ることが目標」と語っていた。彼のその音楽手法(マジック)で、どんな映像や物語が展開されるのか?楽しみになってきた。と同時に、ダニエル・シーザーやディジョン、こちらもサマソニで熱狂を呼んだシークゥなど、徐々に頭角を現している男性オルタナティヴ・ソウル新時代の到来を肌で感じることができた貴重な機会になったと思う。
かつてのクイーンやボン・ジョヴィなど、世界的ブレイクのきっかけを多く生み出してきた日本。ヒットチャートの上位を席巻せずとも、その予兆をいち早くキャッチできる音楽感度の高いリスナーが多数潜在する環境で、彼らの音楽がここからどんな広がりを見せていくのかが楽しみである。また、今後はショーケースだけでなく、さまざまなコンテンツを活用して、これからの才能を発掘していくという「東京音始」。<洋楽>と呼ばれるジャンル、つまり音楽の幅広さや奥深さ、そして自由さを感じてもらえるプラットフォームとして定着することを期待したいと同時に、この試みが永続的なものとなるようなサポートを微力ながら続けたいと思う。
文:松永尚久