ユニバーサルミュージックグループ(UMG)、ソニーミュージックエンタテインメント(SME)、ワーナーレコーズなど、大手レコード会社3社を含むグループが、音楽生成AIサービス「Suno」と「Udio」を著作権侵害で提訴した。
SunoとUdioは、文章から音楽を生成できるだけでなく、生成される音楽の品質の高さで注目を集めており、日本でも話題を呼んだ音楽生成AIサービス。現在、SunoはMicrosoftと提携し「Microsoft Copilot」でも利用可能だ。一方、Udioは、同サービスで生成された楽曲が今年5月にMetro BoominによるDrakeディス曲「BBL Drizzy」のサンプリングソースとして使用されたことも話題になった。
The Vergeによると、Sunoへの訴訟はボストン連邦裁判所で、Udioへの訴訟はニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所で提起された。訴訟はアメリカレコード協会(RIAA)とレコード会社のグループによって提起され、レコード会社側はジャンルや時代を超えたアーティストの作品が同意なく使用されたと主張。RIAAは1作品あたり最大15万ドルの損害賠償と他の費用を求めている。
RIAAの最高法務責任者Ken Doroshow氏は声明で「これらは大規模な音源の無断コピーを含む単純な著作権侵害のケースです。SunoとUdioは、自社のサービスを健全で合法的な基盤に置くのではなく、侵害の全容を隠そうとしています」と述べている。
原告側によると、Sunoに著作権で保護された音楽作品の使用を指摘したところ、同社はトレーニングデータを機密の事業情報として回答を避けたという。訴状によれば、Udioも同様の主張をしている。
また、訴状には「もし、Sunoが原告の音源のコピーを避け、AIモデルに取り込まないよう努力していたら、Sunoのサービスは同社が喧伝するような品質で、広範囲にわたって人間の音楽表現を再現することはできなかったでしょう」と記載されている。
SunoのCEO、Mikey Shulman氏は、eメールによる声明の中で同社の技術を「変革的」とし、「既存のコンテンツを記憶して再生するのではなく、完全に新しいアウトプットとして生成するように設計されている」と主張。また、特定のアーティストに基づくユーザープロンプトを許可していないと述べている。さらに訴訟を起こしたレコード会社にこれを説明する予定があったとし、「誠意ある議論を行う代わりに、彼らは古い弁護士主導の戦略に戻ってしまいました。Sunoは新しい音楽、新しい用途、新しいミュージシャンのために開発されたサービスです。私たちは独創性を重視しています」と述べている。
一方、RIAAは訴状で、SunoとUdioを使用して生成された楽曲の中に、Chuck Berryの「Johnny B. Goode」やABBAの「Dancing Queen」など、レコード会社が著作権を所有する曲と非常に似ている曲があると主張している。
Name that tune 🎶!
— RIAA (@RIAA) June 24, 2024
Sound familiar? That's because @suno_ai_ is training AI on copyrighted works…
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Learn more about our legal action against Suno: https://t.co/LOFOSrRp9M pic.twitter.com/OmF7iUqAd7
音楽生成AIによる著作権侵害問題については、昨年秋にYouTubeが権利保有者の要請に応じてAI生成による音楽コンテンツを削除する新システムを発表。今年5月にはSMEが数百のテクノロジー企業に対し、著作権で保護された作品の「無断」使用について警告する書簡を送付するなど、音楽プラットフォームやレコード会社各社も対応を迫られている。
さらに音楽生成AIに対してはアーティストからも懸念の声が上がっている。今年4月には「Stop Devaluing Music」(音楽の価値を下げるのは止めよう)という書簡が公開され、Billie EilishやKaty Perryなど約200組のアーティストや著作権管理団体が署名。無断で楽曲をAIに学習させることの中止を呼びかけるこの書簡では、AIの無責任な使用が人間の創造性や権利を侵害すると訴えている。
200+ artists call on tech companies to stop AI use that devalues music and infringes upon the rights of human artists. AI has enormous potential as a tool for human creativity – but when used irresponsibly, it poses an existential threat to our art. https://t.co/AaxboN5CEX pic.twitter.com/CPBeRX46td
— Artist Rights Alliance (@artistrightsnow) April 2, 2024
source:https://www.theverge.com/2024/6/24/24184710/riaa-ai-lawsuit-suno-udio-copyright-umg-sony-warner
Text by Jun Fukunaga